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鏡面冷却式露点計とエリンガム図の活用事例DEW PORINT

露点から H2/H2O 系におけるFeの酸化・還元について検討する

概要

炉内雰囲気の露点計測を行い、その炉内雰囲気が製品を酸化させるのか還元させるのかを計算で検討した事例を以下に示します。
なお、弊社より露点計測システムをご購入のお客様には、下記の演算式が入っているエリンガム図付のMicrosoft Excelによる計算用ファイルを差し上げています。炉温や露点など、わずかなデータを入力すれば以下の知識があまり無くても容易に計算結果が得られます。

連続焼結炉で鉄の粉末焼結をN2+H2雰囲気で行う場合の冷却帯での計算例

2H2+O2=2H2Oの反応において、酸化物の標準生成自由エネルギーは、

     ΔG0=-483600+89T (J/mol) T:絶対温度(K) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥@

で与えられる。
2H
2+O2=2H2Oの反応の平衡定数Kは、

     K = (PH2O)
/((P2)(PO2)) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥A

で与えられる。

     ΔG=−RTln(K)   R:気体定数 (8.3144J/mol)

なので、A式より、

     ΔG=−RTln((P
H2O)2/((PH2)2PO2))
        =2RTln(P
H2/PH2O)+RTln(PO2) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥B

@式、B式より、

     RTln(P
O2)=−483600+89T−2RTln(H2H2O) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥C

C式から、

     PO2=exp((−483600+89T−2RTln(H2/PH2O))/(RT)) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥D

炉内雰囲気の露点(℃)を鏡面冷却式露点計により計測し、それをSONNTAGの式に代入して雰囲気の水蒸気分圧を求める。
このとき、
炉内雰囲気の圧力は1atm(101325Pa)と仮定して考える
(SONNTAGの式は、詳細はJIS Z 8806:2001に詳しいのでそちらを参照のこと。)

SONNTAGの式により、
    水の飽和水蒸気圧(Pa)
    =exp(−6096.9385T-1+21.2409642−0.02711193T+0.00001673952T2
               +2.433502 ln(T)) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥E

    氷の飽和水蒸気圧(Pa)
    =exp(−6024.5282T-1+29.32707−0.010613868T+0.000013198825T2
                  
+0.49382577 ln(T)) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥E’

E式のTは露点温度(K)、E’式のTは霜点温度(K)であり、絶対温度である。

E式またはE’式により雰囲気中の飽和水蒸気圧が与えられる。

ここで、鏡面冷却式露点計で計測した露点温度(℃)が−40℃以上であるならば、水の飽和水蒸気圧の計算式を適用してよいと考えられる(−40℃〜0℃くらいの範囲で過冷却露点を計測していると考える)。また、−40℃以下の場合は、氷の飽和水蒸気圧で考える。

神栄テクノロジー製のDewStarシリーズ鏡面冷却式露点計の場合、現状では露点と霜点を切り分ける機能を持たないため、便宜的にこのようにするが、ビューポートかミラーを目視で確認したときに、−40℃以上で明らかにミラーに霜が付着している場合には氷の飽和水蒸気圧の計算式を使う。

計測した露点(または霜点)温度を絶対温度に換算し、E式またはE’式に代入し、雰囲気ガス中の水蒸気圧を求める。求めた水蒸気圧の単位はPaであるため、これをF式により単位をatmに直し、水蒸気分圧にする。

    PH
2O(雰囲気ガスの水蒸気分圧)=(雰囲気ガスの水蒸気圧)/101325 (atm)‥‥‥‥‥F

ここで、炉内に導入するPH
2(H2分圧)は、流量計などで炉内に入れるガス量などから分かる(分からない場合は推定するか熱伝導分析計または気相用水素センサで実測する必要がある)。

F式より、炉内のH
2O分圧も既知の値となるため、得られた値をD式に代入すれば、
2H
2+O2=2H2Oの反応における、ある露点温度での平衡酸素分圧を求めることができる。

例えば、N
2+H2雰囲気の焼結炉の冷却帯において、製品の温度が600℃、H2分圧が3%、冷却帯の雰囲気の露点が-5℃であったならば、 
    P
O2=1.01×10-26 (atm) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥G

同じく、冷却帯での製品の温度が600℃、雰囲気のH2分圧が3%、露点がー30℃であったならば、

    P
O2=1.47×10-28 (atm) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥G’

と求められる。

ここで、2Fe+O
2=2FeOの反応において、酸化物の標準生成自由エネルギーは、

    ΔG=-544000+138T (J/mol) T:絶対温度(K) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥H 
で与えられる。
2Fe+O
=2FeOの反応の平衡定数Kは、

    K=(
FeO)/((Fe)・(PO2)) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥I

ここで、I式のFeOとFeの活量
FeOFeは1とすることができるので、

    K=1/(PO
2

よって、

    P
O2=1/K ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥J

ここで、

    ΔG=−RTln(K)   R:気体定数(8.3144J/mol) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥K

なので、K式より、

    ln(K)=−ΔG/(RT)

よって、

    K=exp(−ΔG/(RT)) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥L

J式とL式から、

    P
O2=1/K
      =1/(exp(−ΔG/(RT))) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥M

ここで、炉温が600℃の場合M式にT=600+273.15、R=8.3144とK式をM式に代入することで、600℃における
2Fe+O
2=2FeO の反応における平衡酸素分圧を求められる。

M式を600℃の条件で計算すると、

    P
2=4.622×10-26 (atm) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥N

となる。
ここで、GまたはG’で求められた2H
2+O2=2H2Oの露点の実測値から求められた平衡酸素分圧とNの2Fe+O2=2FeOにおける平衡酸素分圧とを比較して、

     G(またはG’) > N   の場合は、炉内の製品が焼結炉の冷却帯で酸化する。

     G(またはG’) < N   の場合は、炉内の製品が焼結炉の冷却帯で酸化しない。

という結論になる。
上記の条件で考えると、雰囲気の露点温度が3℃付近で、炉内H
2分圧が2.5%であれば、製品がぎりぎり酸化する条件になる。
温度と雰囲気中のH
2分圧、露点温度の値をを様々に振って、製品のが酸化するかしないか、そのときの露点と水素分圧、温度との関係をExcelなどの表計算ソフトを利用して計算するとともに、エリンガムダイヤグラム上にプロットすると理解しやすい。

エリンガム図にプロットした例(クリックすると拡大)


らに、雰囲気のC+O2=CO2および2C+O2=2COの平衡についても合わせて考えれば、鉄系材料の熱処理における問題が仮に生じた場合でも、その解決への糸口が露点計測を行うことから得られる。鉄鋼材料の酸化、還元、浸炭、脱炭について、露点から説明ができる。

つまり、雰囲気熱処理において露点計測は雰囲気の条件設定や問題発生時の対応のために無くてはならない重要なものであることが分かる。

【参考文献】
神田輝一:『雰囲気熱処理の基礎と応用』,日刊工業新聞社,2014年5月
日本金属学会編:『講座・現代の金属学 精錬編 第4巻 冶金物理化学』,日本金属学会,1982年2月
早稲田嘉夫:『理工系学生・エンジニアのための熱力学−問題とその解き方−』,アグネ技術センター,1985年5月
日本規格協会編:『JIS Z 8806:2001 湿度ー測定方法』, 2001年4月


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