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新和実業株式会社は熱処理設備・温度制御・雰囲気制御・湿度計測の専門メーカです。

TEL. 0565−28−8822

〒471-0855 愛知県豊田市柿本町6丁目9番地11

露点計測 Q&A DEW POINT MEASUREMENT Q & A

よくある露点計測への質問とその回答(鏡面冷却式露点計中心として)

 露点計測に関する総合案内はこちらから
 鏡面冷却式露点計の詳細はこちらから
 センサ式露点変換器・センサ式露点計の詳細はこちらから
 TDLAS露点水分計の詳細はこちらから
一般的事項
Q1 露点とは?
Q2 相対湿度とは?
Q3 霜点とは?
Q4  鏡面冷却式露点計とは何ですか?
Q5 鏡面冷却式露点計(光学式露点計)の精度は?
Q6 低露点の領域は、何℃まで正確に計測できますか?
   
鏡面冷却式露点計の扱い方に関する一般的事項
Q7 鏡面冷却式露点計の校正周期はどのくらいにしたら良いでしょうか?
Q8 鏡面冷却式露点計(光学式露点計)は、連続使用が可能でしょうか?
Q9 鏡面冷却式露点計(光学式露点計)の使い方は簡単ですか?
Q10 鏡面冷却式露点計のセンサ部に水が入ってしまっても大丈夫ですか?
Q11  鏡面冷却式露点計を使う場合、校正ガスが必要ですか?
   
実際の露点計測における注意事項
Q12 腐食性ガスの計測に対応できますか?
Q13 ガスサンプルフィルタの選定について教えて下さい
Q14 露点計測のガスサンプル配管に汚れが付着してきましたが、露点計測に影響はありますか?
Q15 露点計測のガスサンプル配管の材質は何が推奨されますか?
   
鏡面冷却式露点計のメンテナンスに関する事項
Q16 鏡面冷却式露点計の主なメンテナンス方法について教えて下さい
Q17 綿棒について何か注意事項はありますか?
Q18 ミラーの汚れが取れませんが、溶剤を使用しても良いですか?
Q19 ミラーに傷を付けてしまいましたが、露点計測に影響があるでしょうか?
   
工業炉における露点計測
Q20 光学式露点計で、ガス浸炭炉の炉内雰囲気の露点を計測できますか?
Q21 露点からガス浸炭炉の雰囲気などのカーボンポテンシャルを求めることができますか?
Q22 ガス浸炭炉の管理や雰囲気制御にジルコニアO2センサを使っていますが、露点計は必要でしょうか?
Q23 ガス窒化炉の炉内雰囲気の露点を計測できますか?
Q24 ガス軟窒化炉の炉内雰囲気の露点計測は可能ですか?
Q25 細かな粉塵の多いガスの露点を計測は可能ですか?
Q26 焼結炉の露点計測は可能でしょうか?
Q27 鏡面冷却式露点計と露点カップとの間で計測に差が出ます。鏡面冷却式露点計は本当に正しいですか?
Q28 鏡面冷却式露点計を利用して雰囲気熱処理炉の炉内雰囲気の自動制御ができますか?
   

Q1 露点とは?
A1 湿潤空気中の水蒸気圧に,水の飽和水蒸気圧が等しくなる温度。
(湿潤空気中の水蒸気が1気圧の環境で結露する温度と理解しても間違いでは無い。)
英語ではDew Point、一般的に略してDPとも呼ばれる。

また,湿潤空気中の水蒸気が,0℃以下であっても霜とはならず,過冷却状態の水として結露する場合の温度を過冷却露点と言う。。
鏡面冷却式露点計を使った露点計測の場合,-40℃〜-30℃の鏡面温度であっても鏡面には水蒸気が水として結露する場合がある。
このとき計測される温度が過冷却露点。この状態の飽和水蒸気圧を計算する場合,SONNTAGの式の水の飽和水蒸気圧の計算式を利用する。過冷却露点と霜点を鏡面冷却式露点計の光学センサで区別することは難しい(スイス・MBW製など一部の鏡面冷却式露点計では特許技術により露点と霜点の切り分けが可能)。
なお、高分子薄膜を使ったセンサ式露点変換器の場合,0℃以下の計測値は,スイス・MBW製の鏡面冷却式露点計で計測された霜点に対して値付けをしているケースが多い。
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Q2 相対湿度とは?
A2 湿潤空気の水のモル分率と,その温度及び圧力で飽和している湿潤空気の水のモル分率との比の100倍。
実用上は,湿潤空気の水蒸気圧と,その温度における飽和水蒸気圧との比の100倍。
単位の%は,相対湿度であることを明確にするために,%rhと書いても良い。
英語ではRelative Humidity、略してRHとも呼ばれる。
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Q3 霜点とは?
A3 湿潤空気中の水蒸気圧に,氷の飽和水蒸気圧が等しくなる温度。
(湿潤空気中の水蒸気が1気圧の環境で水蒸気から直接,霜を形成する温度と理解しても間違いでは無い。)

鏡面冷却式露点計(後述)では、検出原理上、露点と霜点とを区別しにくいため、露点も霜点も「露点」として扱うことが多い。
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Q4 鏡面冷却式露点計とは何ですか?
A4

鏡面冷却式露点計には、肉眼判定式露点計(一般に露点カップと呼ばれる)、光学式露点計がある。

露点カップを使った方法では、金属面を結露面とし、その温度をドライアイスとアルコールにより徐々に下げ、あるいは徐々に上げ、露が付着し始めるときを肉眼で判定し、そのときの温度を測定することで求める。
この方法では、露点の計測範囲が-30℃〜30℃程度までであり、その不確かさは0.5℃〜5℃となる。これは、人が目視で結露が生ずる温度を計測することによる個人差(人が目視で結露したことを判定してから温度計を読むまでの遅れ、結露したことの判定自体の遅れなど)による。
-10℃以下と+20℃以上の露点は、計測が非常に難しい。
 
光学式露点計は、露点カップを使った方法を電子化したものである。

【原理】
結露面の温度を露点以下に下げると,露(霜)が付着し始め、露点以上に上げると,付着していた露(霜)は蒸発しはじめる。鏡面上の露(霜)の付着量の増減を鏡面からの反射光で検出し,この付着量が一定になるように結露面の温度を自動制御し,鏡面温度を制御する。それを露点(霜点)とする。

【構成】
結露面の冷却には,ペルチェ素子(半導体素子)のペルチェ効果(ゼーベック効果の逆現象・フランスの時計師J.Peltierが1834年に発見)を利用した電子冷却器,小型のスターリング冷凍機などを用いる。また,ペルチェ素子とスターリング冷凍機を併用する場合もある。ペルチェ素子による電子冷却器のみを使う場合,ペルチェ素子の放熱面を水冷することで低露点側の測定範囲を広げることのできる鏡面冷却式露点計もある(神栄テクノロジー株式会社製 S-2など)。
露(霜)の付着の検出方法として,結露面からの反射又は散乱光量(フォトトランジスタなどで計測)を利用する。

【不確かさ】
不確かさは0.1℃〜2.0℃であるが、次の要因も影響する。
 −測定空気の温度
 −測定空気の流量
 −配管などによる圧力損失
 −鏡面と温度センサ(結露する温度を検出するための白金測温体)との温度差
 −鏡面(結露面)の汚染
 −鏡面上の露(霜)の非平衡状態

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Q5 鏡面冷却式露点計(光学式露点計)の精度は?
A5 計測の再現性は、±0.2℃以内になります(静電容量式露点計の場合は一般に±2℃以内です)。
つくば市にある産業技術総合研究所計量標準総合センターにある露点計の日本国内の基準機に対してトレーサビリティーのある検査をすることが可能です。また、JCSS校正を実施することも可能です。
このトレーサビリティーに関するデータとして、検査成績書、校正証明書、トレーサビリティー証明書(体系図)を有償で入手することができます。
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Q6 低露点の領域は、何℃まで正確に計測できますか?
A6 一般に、1ppm以下の水分量(微量水分領域)の計測は非常に難しいことが分かっています。最新の調査・研究結果からは鏡面冷却式露点計により-75℃(1200ppb、大気圧)までは正確に計測できることが分かっています。また、従来-100℃前後まで計測できるとしていた静電容量式露点計も、実際には-75℃以下の露点についても正確に計測できていないということが分かりました。これは2009年頃に独立行政法人産業技術総合研究所において拡散管式水分発生装置を使った微量水分領域の標準が整備されたことにより明らかになりました。
実際には鏡面冷却式露点計では、-75℃までは正確に露点計測が可能ですが、非常に難しく、また時間がかかります。
(静電容量式露点計を使った場合、実際には-75℃前後の露点を正確に計測するには安定するまでに鏡面冷却式露点計よりもかなり長い時間がかかります。)

-70℃〜-50℃の低露点領域においては、TDLAS露点水分計を利用することで、露点計測の応答性を高めることができます。ただし、露点を計測するガスの種類によっては露点計測が難しいケースもあります。

微量水分領域(露点で-100℃前後の領域)の水分量計測を正確に行うには、CRDS微量水分計(キャビティーリングダウン分光法を用いた微量水分計)を用いることになります。
 
一般的な工業用途での露点計測の場合、25℃付近から-75℃までの領域であれば鏡面冷却式露点計が使い易いといえます。ただし、-65℃以下の露点を計測する場合は電子冷却素子を水冷する必要があります。電子冷却素子を水冷しない場合は-65℃までの露点計測が可能です。
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Q7 鏡面冷却式露点計の校正周期はどのくらいにしたら良いでしょうか?
A7 一般的には1年周期程度でお考え下さい。お客様の社内での規定などによります。複数の鏡面冷却式露点計をお持ちの場合にはお手持ちのどれか1台を校正済みの状態にしておくことで、それらの器差を確認する「比較校正」ができます。
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Q8 鏡面冷却式露点計(光学式露点計)は、連続使用が可能でしょうか?
A8 低露点や高露点の場合、電子冷却素子(ペルチェ素子)に負荷がかかりますから、長期間の連続使用の場合、露点計の寿命が短くなる場合があります。
また、鏡面が汚染されやすい空気やガスの露点計測では、鏡面が汚染されることで露点の連続計測ができなくなるケースがあります(鏡面の汚染により鏡面上での結露や反射などに影響があります)。
以上のことをご理解頂いた上であれば、連続使用は不可能ではありません。
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Q9 鏡面冷却式露点計(光学式露点計)の使い方は簡単ですか?
A9

鏡面冷却式露点計(光学式露点計)自体の操作は簡単ですが、露点計は精度の高い計器です。従って使い方、管理方法などを誤ると十分に機能を発揮できません。管理上、最も重要なことは、鏡面が清浄であることです。さらに、サンプリング配管に「もれ」、「汚れ」、「水分」が無いことが必要です。
日常のメンテナンスとしては、

  1. 鏡面を適宜、清浄な綿棒で拭き、鏡面に汚れが無いようにすること(綿棒は必ず薬局で脱脂綿の綿棒をご購入の上お使い下さい)。
  2. 計測対象の気体に粉塵などが含まれる場合、フィルタの手入れを確実に行うこと。
  3. サンプリング配管が汚れていないこと。汚れた場合は洗浄又は交換をすること。
  4. サンプリング配管中に水分が結露して溜まってしまった場合はサンプリング配管に低露点の気体(例えば窒素ガスなど)を長時間流し、配管中を十分に乾燥させるか、サンプリング配管の交換を行うこと。  

が必要となります。
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Q10 鏡面冷却式露点計のセンサ部に水が入ってしまっても大丈夫ですか?
A10 基本的にはこれでセンサが壊れることはありません。ただし、水を除去し、内部を十分に乾燥させる必要があります。
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Q11 鏡面冷却式露点計を使う場合、校正ガスが必要ですか?
A11  必要ありません。なお、結露面(ミラー)の汚れは露点計測に誤差を生じさせる原因となります。
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Q12 腐食性ガスの計測に対応できますか?
A12 対応できます。御見積もりをご依頼頂く段階で、計測するガスについてできるだけ詳しくお知らせ下さい。それに基づいて光学式露点計本体の選定、ガスサンプル機器の選定を致します。
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Q13 ガスサンプルフィルタの選定について教えて下さい。
A13 熱処理炉などのプロセスガスの露点計測を行う場合、ガスサンプルフィルタを使う必要があります。このフィルタは、サンプルガに含まれるパーティクルを除去することが出来る反面、ガス中の水分がフィルタエレメントに結露し、それが露点計測に悪影響(つまり、計測の誤差)を与える可能性があります。そのため、プロセスに応じて、最適なフィルタを選定する必要があります。
もちろん、あえてフィルタを使わないという選択もあります。それらの対応は計測するガスの組成、平均的な露点温度、パーティクルの量などを勘案して決めることになります。
また、フィルタエレメントの圧力損失は露点計測に大きな影響を与えます。これは結露する現象が圧力の影響を大きくうけるためです。できるだけ圧力損失の少ないフィルタを選択しなければなりません。
従って、実際にお使いになる環境を確認させて頂いたうえで、検討することとなります。
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Q14 露点計測のガスサンプル配管に汚れが付着してきましたが、露点計測に影響はありますか?
A14 露点計測をしているガスサンプル配管に特に塩類が付着すると、露点計測に大きく影響します。すすなどのパーティクルの付着も塩類に比べると影響は少ないものの、露点計測に誤差を生じさせます。
露点計測の場合、ガスサンプリングラインにある配管、フィルタなどに汚れが付着して、それに水分が付着するなどのことがあれば、その水分が露点計測に影響を与えますから、フィルタエレメントや配管などは適宜交換することが必要になります。
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Q15 露点計測のガスサンプル配管の材質は何が推奨されますか?
A15 高露点(大気温度よりも高い露点)の場合と-50℃以下の低露点の場合、ステンレス(SUS304またはSUS316)のミガキのチューブを使用することになります。-50℃〜25℃くらいの範囲であれば、フッ素樹脂チューブが使用できます。継手はステンレス製のチューブ継手を使います。なお、露点計測の目的によっては-65℃〜-50℃の範囲であってもフッ素樹脂チューブを利用しても差し支えない場合もあります。フッ素樹脂チューブについては、選択するにあたりその特性を十分に調べる必要があります。
銅管は露点計測には向いていません。またシリコンチューブには吸水性がありますから露点計測には使えません。
工業炉に限って言うならば、頻繁に交換するという前提であれば、-30℃〜20℃程度の露点範囲でテトロンホースを使っても問題無く露点を計測している事例があります。ただし、炉から一次フィルタまでの間の配管に限られます。この場合、テトロンホース内部に結露を生じたり内部が汚れたりしたら、すぐにテトロンホースを交換しなければなりません。
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Q16 鏡面冷却式露点計の主なメンテナンス方法について教えて下さい
A16 @ミラーおよびその周囲を清浄な綿棒(新品の脱脂綿の綿棒)でミラーに傷を付けないように丁寧に拭く。
Aフィルタのエレメントを適宜交換する(フィルタを使っている場合のみ)。
B配管等が汚れたら適宜洗浄または交換する(交換することの方がお勧めです)。
C露点計や露点計が収納されている制御盤や台車などの外観が汚れていれば、適宜掃除を行う。
D配管継ぎ手に緩み等が無いか適宜確認する。
などが主なメンテナンス方法になります。
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Q17 綿棒について何か注意事項はありますか?
A17 JIS Z 8806:2001の41ページにミラーのクリーニングについて次の記述があります。
「ミラーを正常にする場合は、綿棒のようなものに水を浸けて鏡面をふき、続いて乾いた布で拭けばよい。水に溶解しない不純物がある場合は、アセトン又はアルコールでまずクリーニングし、完全に乾燥させた後に上と同じ動作を繰り返せば、水に溶解しない不純物も除去できる。
ミラーを清掃する材料は、鏡面を傷つけないように、柔らかくじんあいの生じにくい材料で、かつ、完全に脱脂されていることが必要である。市販の綿棒は、通常ローションが塗布されており、露点計用としては適さない。医療用綿棒がよい。」

鏡面冷却式露点計のミラーをクリーニングする際に使う綿棒は、
必ず「脱脂綿」の綿棒をご使用下さい。脱脂綿の綿棒はお近くの薬局にて入手できます。
市販の安価な綿棒には、化粧水などが含まれている場合があり、これを使うとミラーを余計に汚染してしまいますので使用しないで下さい(これにより露点計が故障するわけではありませんが、露点計測が安定しません)。
薬局にはコットンボールとよばれる脱脂綿のボール状のものも販売されており、これも利用可能ですが、これとピンセットを使ってミラーのクリーニングを行うと、ピンセットでミラーを傷つけてしまう可能性があります。そのため、綿棒お使いいただく方がより安全です。
なお、
一度使った綿棒は再利用しないでください。綿棒に付着しているパーティクルがミラーを汚したり、あるいはミラーに傷を付けたりする場合があります。必ず綿棒は使い捨てにして、使ったものは必ずゴミとしてすぐに処分して下さい。
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Q18 ミラーの汚れが取れませんが、溶剤を使用しても良いですか?
A18 ミラーの汚れがひどく、ミラー表面に付着したものが綿棒だけでは容易に除去できない場合にはエタノールを水で薄めたものやアセトンを綿棒の先に含ませ、それによりミラーの汚れを除去しても問題はありません。その際、それらの溶剤を大量に使用しないようにして下さい。
溶剤を使用したあとは、ミラーの表面に残渣が残りますので、これは新品の綿棒を使って丁寧に除去して下さい。DewStarシリーズ鏡面冷却式露点計の場合、ミラークリーニングのあとにACCU-STARのサイクルを実行して自動でミラーバランスを取り直す必要があります。
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Q19 ミラーに傷を付けてしまいましたが、露点計測に影響があるでしょうか?
A19 DewStarシリーズ鏡面冷却式露点計の場合、多少の傷ならば問題のない場合があります。ACCU-STARサイクルを実施したあとに、「OK」が表示されるようであれば、基本的には問題はないと判断して構いません。ACCU-STARサイクルを実施したあとで、ミラーに汚れが無い状態であっても「DT」が表示されるならば、ミラーの傷が光学系の結露の検出に悪影響を及ぼしていると考えられます。この場合、工場にてミラーを研磨しなおし、光学バランスの採り直しをする必要があります(修理が必要です)。
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Q20 光学式露点計で、ガス浸炭炉の炉内雰囲気の露点を計測できますか?
A20 問題なくできます。また、十分な実績もあります。ただし、御見積をご依頼いただく際にその旨をお知らせ下さい。
この場合、新和実業株式会社がご提供する露点計測システムは、ガス浸炭炉用として特殊仕様でご提供しております。
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Q21 露点からガス浸炭炉の雰囲気などのカーボンポテンシャルを求めることができますか?
A21 直接求めることはできませんが、露点とカーボンポテンシャルの関係のグラフとの比較で露点からカーボンポテンシャルを知ることができます。このとき、グラフの露点は鏡面冷却式露点計で計測した露点に対して1℃程度低いとお考え下さい。つまり、実際に計測した露点が5℃であったならば、グラフでは4℃前後のところのカーボンポテンシャルの値を読みます。カーボンポテンシャルと露点との関係のグラフは、露点カップにより計測された露点に基づいて作られていますが、これまで弊社にて調査した結果から、露点カップで得られた露点におよそ-1℃の、誤差が発生していることが考えられます。これは肉眼で結露したと判定してから実際に温度計の指示値を読むまでに1℃ほど温度が下がってしまうということに起因していると考えられます。
そのほか、新和実業株式会社が開発したCpCalcには、露点からカーボンポテンシャルを求める計算式も搭載されています。この計算では、水性ガス反応の反応式を使っている関係で、炉内の水素分圧(vol%)を入力しなければなりません。ブタン変成RXガスをキャリアガスとしている場合、炉内雰囲気の水素分圧は28〜32%程度ですが、正確には熱伝導分析計などを用いて計測する必要があります。露点と水素分圧が分かれば、カーボンポテンシャルは計算できます。

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Q22 ガス浸炭炉の管理や雰囲気制御にジルコニアO2センサを使っていますが、露点計は必要でしょうか?
A22 鏡面冷却式露点計(光学式露点計)または、CO/CO2分析計をジルコニアO2センサのバックアップとしてご使用になることをお勧めいたします。ジルコニアO2センサは、どういう状態が正常であるのかを客観的に調べるための手段がありません。そこで、バックアップする計器が必要になってきます。
なお、CO/CO
2分析計をバックアップとして使う場合、計測値と炉温から新和実業株式会社がご提供するCpCalcによりCP値が演算できますので、この値をジルコニアO2センサとCP演算器から得られるCP値と比較することでジルコニアO2センサが正しいかどうかの評価ができます。
露点からでも評価はできますが、お使いになる会社、工場において露点とCPとの関係のデータを得ておいて、その値と比較することが良いと思われます。なお、古い文献のデータ(O.E.Cullenらのデータ・下図)は露点カップを使ってえられたデータを使っていますから、光学式露点計で得られたデータとの間では誤差があります。この点に気をつけて下さい。古い露点カップで採られたデータは、鏡面冷却式露点計で正確に採られたデータに対して-1℃程度の誤差があるとお考え下さい。人が露点カップで結露を目で見て判断してから温度計の指示値を確認するまでの間に、温度計の指示値は1℃程度下がってしまうからです。もちろん個人差も含まれます。

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Q23 ガス窒化炉の炉内雰囲気の露点を計測できますか?
A23 結論としては,鏡面冷却式露点計(自動露点計・露点カップを含む広い意味で)による正確な意味での露点計測は不可能。
一方,
TDALAS露点水分計を使うことでほぼ正確な露点計測が可能

NH
は温度が-33.34℃において蒸気圧が101325Paとなる。この-33.34℃がNHが100%である場合の沸点である。
NH
に対してHOなど,極性を持った分子が混合した場合,NHの蒸気圧が減少する。このとき,極性分子であるNHとHOは極性引力により結びついている。
NH
に対するHOの分圧が増えるに従い,NHの蒸気圧は減少し,HOの分圧が100%に近づくとNHとHOの混合ガスの蒸気が飽和する温度(沸点)は100℃に収束する。
H
Oは圧力が101325Paの圧力下においてその温度が-33.34℃のとき,氷として存在し,その蒸気圧はSONNTAGの式(ITS-90)から26.7Paとなる。この値は同じ温度,圧力でのNHの蒸気圧に対して1/3795であるため,NHにごく僅かなHOが混合した場合の蒸気圧はNHとNH・HO(極性引力で結びついたもの)による蒸気圧と理解できる。
このNH
とHOの混合気体について,鏡面冷却式露点計に流すと,鏡面冷却式露点計はその露点ではなく,混合気体の露点ではなく,混合気体の飽和蒸気圧が101325Paとなる温度,つまり沸点を計測する。
混合気体中のH
O分圧が上昇すると,その飽和蒸気圧が低下するため,鏡面冷却式露点計は鏡面付近の蒸気圧を上げて,鏡面への結露の量を一定に維持するように自動制御する。
そのため,NH
に極性を持ったHOが極性引力で結びついたものが増えたとき,そのガスを鏡面冷却式露点計に流すと検出される値,つまり(露点ではなく)沸点は上昇する。
ここでNH
に対して極性を持たない,NHに比べて沸点の低い分子(例えばNやH)が混合した場合,その混合気体の蒸気圧はNHの分圧に関わらずNHの蒸気圧となる。これは様々なガス窒化炉の雰囲気ガスの鏡面冷却式露点計による計測値が-30℃〜-28℃程度を示すことからも明らかである。
NH
が100%のガスを101325Paの圧力で鏡面冷却式露点計に流したとき,鏡面冷却式露点計は値として-33.34℃を出力する。これは101325Paにおいて気体のNHが液化する温度,つまり沸点である。従って,NHを含む混合ガスにおいて,-33.34℃よりも低い温度は鏡面冷却式露点計を使って計測することはできないということになる。
なお,ガス窒化炉のようにNH
を含む存在するガスを鏡面冷却式露点計に流したとき,「露点」として表示される温度(沸点)が安定したとき,鏡面の状態を観察すると,鏡面に結露していることが肉眼では観察できない。鏡面冷却式露点計は,鏡面を制御し,そこに生じた結露の量を光学的に検出し,そのときの鏡面の温度を露点として出力している。NHが含まれるガスについて,鏡面冷却式露点計が光学的には結露していると判断している状態で肉眼で結露が見えないのは,NHとHOの混合したものが液化したものの表面張力が小さいため結露が水滴のようにならず,鏡面全体に拡がるためである。鏡面冷却式露点計の光学系はこの肉眼では分からない鏡面全体に拡がる結露による膜を通して反射する光量が基準光(どこにも反射していない光)の光量に対して減少していることを検出できる。したがって,NHとHOの混合したものが液化する温度(沸点)を正確に検出することができる。

ガス窒化炉の雰囲気の露点の鏡面冷却式露点計を使った計測に意味があるのか?
ここまででガス窒化炉の雰囲気の鏡面冷却式露点計による露点計測が正しい意味での露点計測になっていないことはこれまでに説明した。
このことから「鏡面冷却式露点計による露点計測に意味があるのか?」という疑問が生ずる。
結論としては,窒化炉のコントロールの手段としては意味があると考えられる。
ガス窒化において炉内雰囲気のH
O分圧が影響を及ぼすことが分かっているため, 炉内のHO分圧を計測することが求められるが,炉内のHO分圧が増えることで鏡面冷却式露点計で検出される値が-33.34℃から増えてゆくことが分かっている。また,この値が-33℃〜-23℃程度の範囲に入らなければ鋼の窒化層がうまく得られないこと,-15℃以上を示す場合,製品に窒素が入らない,あるいは入りにくいという現象が経験的に分かっており,そのことが多く報告されている。

NH
ガスに含まれるHOの量を正しく計測する方法
NH
はCO排出量削減の観点から今後,Hのキャリアとしての役割が大きく期待されている。その製造工程において一般的にはNHに対応できるCRDS微量水分計が用いられているが,計測可能な範囲は数十ppbオーダーの水分量である。それ以上の水分量の計測は難しい。また,ガス窒化炉などでの露点計測には向いていない。
そこで,工業炉,特に窒化炉における露点計測においては,鏡面冷却式露点計の計測レンジに重なる別の方式の自動露点計が求められる。
現在,背景ガス(混合している別のガス)の影響が多少あるものの,TDLAS露点水分計を使うことで露点に換算したとき,±0.5℃DPの精度でH
Oの量を露点として計測できることが分かっている。
TDLASとは,波長可変ダイオードレーザー吸収分光式という意味である。2原子以上で結合した分子は、赤外〜近赤外領域で伸縮や回転等のモードに由来する固有の周波数で吸収現象を起こす。水分子が持つ固有振動数が吸収する波長域において、入射光の強度I0と透過光の強度Iとの比の対数が吸収物質の厚さLに比例すること、光の吸収係数が濃度Cに依存することから、水分量として測定し、露点値を導いている(参考:神栄テクノロジー株式会社ホームページ)。
新和実業株式会社では,アンモニアを含むガスの計測が可能な鏡面冷却式露点計とTDLAS露点水分計の両方を扱うことができるため,特に熱処理のお客様向けに最適な計器をご提供することが可能である。

ここでガス窒化炉について考える
製品が炉内に前洗浄であるアルカリ洗浄の残渣やアルカリ性の防錆剤を持ち込むことにより鏡面冷却式露点計が検出する値(沸点)が上昇する可能性がある。アルカリは,炉内の断熱材のAl
2O3やSiO2を劣化させることが知られているが,NH3およびその分解ガスに含まれるH2により劣化したAl2O3やSiO2の一部が還元され,その結果生じたH2Oが炉内雰囲気の沸点を上昇させる可能性があるのではないかと推測される。その結果,特に断熱材が劣化した窒化炉においては,炉内雰囲気中のH2O分圧が僅かに上昇しやすくなり,結果として鋼の表面に窒化層が生じにくい雰囲気が形成されると推測される。
ガス窒化炉の雰囲気コントロールにおいて重要と考えられることは,

  1)炉内に導入するガスの露点を可能な限り下げること
  2)炉内に装入する製品(ワーク)や治具等に,アルカリ成分を付着させないこと

であり,これらのことが最低限求められる。特に炉内へのアルカリ成分の持ち込みは窒化炉の断熱材に対して致命的な結果をもたらすことが経験的に知られている。
まず,炉の状態を十分に把握するため,鏡面冷却式露点計を利用して炉内雰囲気の沸点を計測し,さらにその温度が-33℃〜-23℃程度の範囲に入ることを確認することが重要ではないかと考える。
同時に、窒化の前処理として,製品(ワーク)表面にアルカリ成分の残渣を残さないよう徹底的な洗浄を行うことが必須である。
窒化においては,製品(ワーク)表面に付着している油分なども窒化が入らなくなる要因ととして知られている。つまり,Feが完全に露出している状態を前処理の段階で作る必要がある。炉内のNH
3は,約500℃の雰囲気中で、Feを触媒として

  2NH
3 → 2<N> + 3H2

の反応で分解し,このとき生まれる活性の高い<N>が鋼の中に侵入して窒化が生ずる。このメカニズムを効率よく生じさせるためには前処理が極めて重要となる。
自動車のエンジンのバルブスプリングの製造工程では,窒化処理前に製品をファインショットにより表面の付着物を完全に除去している。除去後の製品は、一切,人が素手で触ることがあってはならない。人の手の僅かな皮脂で汚染され,その部分に窒化が入らないためである。

一度窒化がが入らなくなった窒化炉は一般的には断熱材を全て更新する(断熱材のオーバーホールの実施)しか対応策が無いかもしれないため,炉の健全性を保つためにも前洗浄をはじめとした窒化の前処理を徹底して改善することが必須である。
 
昔から窒化プロセスにおいて雰囲気の露点計測が行われてきたが,その結果,経験的に露点が低くなければ窒化が入らないと言われてきた。現在もなおこの現象のメカニズムが科学的に解明はされていないが,2000年代に入り、神栄テクノロジー株式会社が窒化炉の炉内雰囲気の計測が可能な鏡面冷却式露点計を開発したことで,鏡面冷却式露点計を使って検出される値(沸点)がどの程度の範囲に入らなければ鋼に窒化がうまく入らないことが分かってきた。
窒化プロセスのコントロールには鏡面冷却式露点計を使った計測が必要と考えられるが,これは特に窒化のトラブルを回避するためという側面がある。窒化の膜厚を制御するという意味では,近年,株式会社TYKが開発したプロトン伝導型固体電解質を使ったH
2センサが活用されはじめている。これは従来使われていたH2熱伝導分析計のようにNH3による干渉が無いため,これによる窒化ポテンシャル制御が少しずつ成果を上げはじめている。
 

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Q24 ガス軟窒化炉の炉内雰囲気の露点計測は可能ですか?
A24 鏡面冷却式露点計を使った場合,ガス窒化炉の場合とと同様に,H2OとNH3の混合気体の沸点の計測になるが,58℃以下で炭酸水素アンモニウムが析出すると,そこに含まれるH2Oについても評価する必要がでてくるため,対応できない場合がある。N2+CO2+NH3雰囲気の場合,鏡面冷却式露点計で沸点の計測ができる場合がある。
TDLAS露点水分計の場合,分析セル内に炭酸アンモニウム,炭酸水素アンモニウムが析出するの可能性があり,対応できない。

近年、プロトン伝導型固体電解質を使ったガス軟窒化炉の水素分析から、窒化ポテンシャルを求めることができるようになった。これは、ガス軟窒化炉の内部に直接プロトン伝導型固体電解質を挿入するもので(ガス浸炭炉で使われるジルコニアO
2センサと同様)、ガスサンプリング配管のつまりなどが関係なくなるため、近年、急速に普及している。新和実業株式会社からも購入は可能である。
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Q25 細かな粉塵の多いガスの露点計測は可能ですか?
A25 可能です。
神栄テクノロジー株式会社製のDewStarシリーズ鏡面冷却式露点計を利用する場合には、基本的には二つの方法があり、

 1)ガスサンプルラインに適切なフィルタを取り付ける
 2)光学計保護レンズを取り付ける(オプション)

という方法です。これら二つを組み合わせることもできます。
2)の方法は、DewStarシリーズ鏡面冷却式露点計を購入する際に指定して下さい。
1)の方法の問題点は、適切なメッシュまたは材質ののフィルタエレメントを選択しないと、圧力損失が多くなったり、フィルタエレメントに結露したりなどの問題が生じ、露点計測が不安定になる場合があります。また、フィルタエレメントが詰まった状態で使い続けると、圧力損失が増えるために露点計測の正確さが失われます。
2)の方法の場合、取り付けた保護レンズの先端が汚れる場合がありますから、その先端は適宜、綿棒で清掃することが必要です。鏡面の清掃と同時に保護レンズの清掃も行うと良いでしょう。
詳細は新和実業株式会社までお問い合わせ下さい。
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Q26 焼結炉の露点計測は可能でしょうか?
A26 雰囲気ガス炉をご使用の場合、炉内雰囲気の管理にご使用頂くことは可能です。鏡面冷却式露点計の機種選定については、雰囲気ガスの種類や実際の露点により変わってきますので注意が必要になります。また、ガスサンプリングラインにフィルタを取り付けるのがことが必要か、必要でないか、あるいは可能か、不可能かについても実際に処理の現場で確認し、検討する必要があります。
実際にN
2+RXベースのメッシュベルト型連続焼結炉の雰囲気の管理において実績があります。
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Q27 鏡面冷却式露点計(光学式露点計)と露点カップとの間で計測に差が出ます。鏡面冷却式露点計は本当に正しいですか?
A27 鏡面冷却式露点計(光学式露点計)の計測結果は正確です。露点カップを使った露点計測は鏡面冷却式露点計(光学式露点計)に対して、-0.5〜-5℃程度の誤差が生じます。計測をする人の経験により、-0.5℃〜-2℃程度に抑えることができます。
これは、人が目で鏡面に結露が生じたと判断してから、温度計の指示値を見るまでのほんの短い間にも、温度計の指示値が下がることに理由があります。
そのほか、露点カップでは連続した露点計測が困難ですが、鏡面冷却式露点計では連続計測ができます。従って、どのタイミングの露点を計測するかということも問題になってきます。熱処理炉の炉内雰囲気の露点は安定しているものもあれば、常に変動しているものもありますから、炉によっては露点カップによる計測が難しいこともあります。鏡面冷却式露点計を利用して連続計測をすると、露点が想像していた以上に常に変動していることが分かることがあります。
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Q28 鏡面冷却式露点計を利用して雰囲気熱処理炉の炉内雰囲気の自動制御ができますか?
A28 ケースバイケースで変わってきます。ミラーが塩類などにより汚れることで露点が正確に計測できなくなる場合があります。また、フィルタの汚れやフィルタへの水分の付着などが原因で露点が正確に計測できなくなる場合があります。
現状では、連続でのモニタリングは可能です。これを制御にまで利用するには、まずは連続でのモニタリングを実施して、その実績に基づいて判断するしかありません。ミラーの清掃の頻度などのデータを得ることが重要になります。
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